2008/10/30
フルマーレの日の出
チェック・インを済ませ、部屋で荷物を解き、
ビールを飲みにメイン・デッキに上がると、
すでにほぼ全員がバウ(船首)に集まって宴会が繰り広げられていた。
朝4時頃まで続いたらしいが、
アケちゃん(嫁)とオトさんは早々に失礼した。
モルディブに来ると、時差ボケのせいで夜9時には眠くなり、
朝4時過ぎには目が覚める。
日本に戻るまで早寝早起きなのは毎度のことだが、
この日も4時半には目が覚めてしまった。
まだ外は真っ暗だが、
メイン・デッキの船尾(スターン)テラスは電気がついていた。
籐の椅子が並べられていて、ゴージャスだ。
ここで本を読んで夜明けまで過ごすのが、
サファリに来たときの習慣だ。
フルマーレの向こうから日が昇ってきた。
風は南西から穏やかに吹いている。
(また、風向きが変わった)
鏡のような海面が鈍く光り始める。
ぶら下がっているバナナは、どのサファリ・ボートでも見られるもので、
ゲスト、スタッフが、自由にもいで食べて構わないおやつだ。
日がたつにつれて徐々に上の青い部分が黄色く熟していく
変化を見るのが楽しい。
夜が明けて周囲を見渡すと、
多くのサファリ・ボートが所狭しと停泊しているのが望める。
朝7時からダイブ・ブリーフィングと聞かされていたが、
まだ誰も起きてこない。
誰も部屋に鍵をかけない。オトさん以外は
ドーニがハンディ・クルーズに横付けされると、
スタッフが荷物を上げてくれる。
乗船客はハシゴを使って母船に乗り移り、
後部デッキで靴を脱ぎ船内に案内された。
これから1週間は裸足の生活だ。
広々としたメイン・デッキは、アジアン・テイストの調度で統一されている。
リゾート・ホテルの内装かと見まがうほどだ。
出迎えは、マンゴー・ジュースとツナ・サンドだった。
サファリ・ボートに泊まるのは3艘目だが、
ウェルカム・ドリンクはまだしも、サンドイッチが出されたのは
初めてだった。
チェック・インのためいくつかの書類を記入し終えると
部屋割りが発表された。
客室はローワー・デッキに7室、アッパー・デッキ(ブリッジ・デッキ)に
3室の計10室。
オトさんとアケちゃん(嫁)は、102号室をいただいた。
船腹が一番広い中央に位置するので、
向かいの106号室とあわせ、ツインでは最も広い部屋だ。
部屋を広く使えるようベッドの下は収納庫になっていて、
スーツケースが2個しまえるスペースが確保されている。
でも、そのぶんベッドが高いので、腰掛けると足は床に届かない。
ベッド・メイクとタオルの交換は毎日やってくれていたらしい。
(従来、サファリ・クルーズでは2日に1回が常識だった)
最初の2日間何もしてもらえなかったので、
後日、他のゲストに聞いて気づいたのだが、
部屋を出るとき鍵をかけていたのはオトさんたちだけで、
3日目にメイド担当のスタッフに、
朝は鍵をかけないように言われてしまった。
どうやら、彼はマスターキーを持っていないようだ。
他のゲストから鍵をかけている理由を聞かれたが、
その時はお茶を濁していた。
海の上という完全に隔離された場所で万一盗難が起きたとき、
部屋に鍵がかかっていれば、
マスターキーを持ち出せるスタッフだけが疑惑の対象になるので、
ゲストに迷惑をかけずに済むから。
と、ここでカミング・アウトする。
ところが、オトさんはタバコやカメラや日記帳など、
手にしていたあらゆる小物を置きっぱなしにする癖があり、
しかも置いたことさえ忘れてしまうので、
しょっちゅう船中を探しまわってみなさんにご迷惑をおかけしていました。
2008/10/28
島々の花環
古代サンスクリット語で『島々の花環』を意味する
マーロディープ(Malodheep)が語源と言われる
モルディブ(Maldives)は、
かつて欧州の船乗りたちに『真珠の首飾り』と形容されたように、
26のアトール(環礁)に珊瑚礁の島々が輪を描くように点在している。
面積も人口も最大の島である首都マーレ(Male)の
すぐ北東にあるフルレ(Hulhule)は空港の島だ。
埋め立てによってできた滑走路の端は、海に突き出ている。
入国手続きを終えて外に出ると、すぐジェティ(桟橋)だ。
ここにドーニ(Dhoani)と呼ばれるボートが横付けする。
ドーニは、島と島をつなぐ主要な交通手段だ。
今回、わたしたちが1週間クルーズするサファリ・ボート
ハンディ・クルーズ(Handy Cruise)は、
フルレの北に位置する人工島フルマーレ(Hulhumale)
のラグーン内に停泊している。
フルレからフルマーレまでは、ドーニで20分ほどだ。
現地時間は午後11時だが、日本時間では午前3時をまわっている
ことになるので、はっきり言ってクタクタだが、
事前の情報で、100艘を超えるモルディブのサファリ・ボートの中で
最も豪華な一艘と聞いていたので、期待が高まる。
2008年10月現在、日本の旅行会社が扱っていない
このボートをチャーターできた経緯は省略するが、
今回、22名の乗客はすべて日本人だ。
9月はまだ雨季で、この時期は南西寄りの風が吹くはずだが、
この夜、風向きは北西だった。
ドーニが島を離れ周囲が暗くなると、
東の空にかかっている下弦の月と満天の星が美しい。
フルマーレのラグーンに入ると、
サファリ・ボートが所狭しと停泊している。
ハンディ・クルーズは島の北端近くに泊っていた。
いよいよ乗船だ。
2008/10/27
ご禁制
タラップを降りて建物まで歩く時に目に入る
このアルファベットとターナ(Thaana)文字の電飾サインを見るたびに、
モルディブに『着いた』ではなく、『帰ってきた』と実感する。
初めてモルディブに来たのは1990年9月。
18年の間にモルディブも大きく変貌したが、
この佇(たたず)まいだけは変わっていない。
この日、シンガポール航空SQ452便が到着した20分後に出発する
マレーシア航空MH188便に友人夫婦が乗ると聞いていた。
我々がタラップを降りているとき、隣に駐機していたMH便は
ちょうど搭乗客がタラップを昇っているところだった。
友人夫妻に会えるのではと目を凝らしたが、
彼らを見つけることはできなかった。
シンガポールからマーレへ向かうSQ452便に搭乗すると、
離陸前に入出国カードが配られる。
裏面には、輸入禁止/制限品のリストが載っている。
麻薬および輸入禁止薬物、ポルノ、武器/火器/弾薬、化学薬品
というのは万国共通だろうが、
反イスラムなもの、宗教的な偶像、豚肉および豚肉製品、酒類、犬
というものはいかにもムスリム100%の国らしい。
十字架のネックレス、豚骨味のカップ麺などは
うっかり持ってきてしまいそうだ。
スピアガン(水中銃/銛)が持ち込み禁止なのは、
観光収入が外貨獲得の重要な役割を占めているこの国の
自然環境を大事にするお国柄が表れている。
サンゴ、ベッコウは自然物・加工品に限らず持出厳禁、
貝殻や砂などの自然物が持出禁止というのもユニークだ。
2008/10/25
彼我の差
2008/09/20 18:21 at チャンギ国際空港第3ターミナル スカイ・トレイン・ターミナルA
前述したが、シンガポールの玄関口チャンギ国際空港は、
今年3つ目のターミナルが稼動し始めた。
3つのターミナルは、スカイ・トレインと呼ばれる
無人シャトルで繋がれている。
ガラスのすぐ向こうに広がる光景の、緑の量に圧倒される。
成田空港と比べると、利便性と快適性に大きな差を感じる。
少なくとも成田では、滑走路の向こうに田園は広がっているものの
ターミナル周辺の緑は極めて少ない。
ましてや、建屋内に入ると皆無といっていい。
チャンギでは、サテライトのあちこちにオーキッド(ラン)を始めとして、
様々なグリーンが配置されている。
2008/09/20 19:19 at チャンギ国際空港第2ターミナル3階i-connectコーナー
アメニティで大きな差を感じるのはネット環境だ。
成田にはインターネットに接続できるPCが
設置されているコーナーが少ない。
しかも、有料だ。
100円玉を投入しなければ使えない。
料金は、都内港区の駐車料金並みだ。
頻繁にリピートする外国人はまだしも、
母国に持ち帰っても両替できないコインを、
帰国直前の外国人観光客の何割が
出国便のサテライトまで持ってくるというのだろう?
2008/09/20 19:22 at チャンギ国際空港第2ターミナル3階i-connectコーナー
チャンギ空港には、無料で15分間使えるPCが至るところに
設置されている。
もちろん、空いていればいつまで使っても構わない。
利用客へのサービスを、利用者の立場に立って提供する姿勢に
大きな格差を感じさせられる。
でも、日本語閲覧はできても、入力ができないんだよね。
メール打ったりブログ投稿するなら、
携帯で海外ローミングしろってか。
2008/10/24
1歩前進
2008/09/20 17:55 at チャンギ空港第3ターミナル Bサテライト内
トイレである。
機内では通路側に座っていた人に遠慮して一度しか
トイレに行かなかったので、空港に着いた途端に呼ばれた。
建物が新しいからきれいなのは当然だが、
間接照明と鉢植えのグリーンが何ともシャレているじゃないか。
2008/09/20 17:54 at チャンギ空港第3ターミナル Bサテライト内
ところが、清潔そうなトイレにハエがいた。
だが、よく見ると描かれた(正確にはプリントされた)ものだ。
2008/09/20 17:54 at チャンギ空港第3ターミナル Bサテライト内
どこにプリントされていたかというと、
小便器の中である。
男子の常として、この何やら汚れみたいなものを落としたいと
狙わずにはいられない。
という心理を突いた、イチローの流し打ちのようなヒットである。
翻(ひるがえ)って、我が国はというと無粋な貼り紙だらけだ。
「急ぐとも 心静かに手を添えて 外に漏らすな 松茸の露」
なんていうのは季語が入っているだけまだ風流なほうで、
「朝顔の 外に漏らすな 竿の露」になると
いささか即物的な匂いが漂い始め、
「気をつけろ 君のしずくで 床が泣く」に至っては、
交通標語並みのセンスのなさである。
しかし、下の話になるとなぜキーボードを打つ指が
軽くなるのだろう?
チャンギ空港第3ターミナル
現在、モルディブに行くにはいくつか方法がある。
ここ数年利用しているシンガポール航空だと、
シンガポールで3時間ほどトランジットする必要がある。
去年のゴールデン・ウィークに来たときはまだ建設中だった
第3ターミナルが今年から供用開始になり、
SQ637便はここに到着した。
第2ターミナルも広かったが、ここはさらに広い。
そして天井が高いので広々している。
成田より羽田のビッグバードに雰囲気が似ているかもしれない。
成田空港ができた当時は、なんて広いんだと感嘆したものだが、
こうしてチャンギ空港の店舗の充実ぶりを見ると、
成田空港より羽田空港のほうが、日本の玄関としてふさわしいのでは
という気になってくる。
ブランドものに一切関心がないアケちゃん(嫁)とオトさんは
それでも時間を持て余してしまうのだが。
旅の醍醐味
翼に視界を半分遮(さえぎ)られ、眺めはいいとは言えないが、
早く降機できる前の方の席を選んだのだからしょうがない。
通路側の方が気軽に歩き回れるというメリットはあるが、
真っ白い雲とほんのり茜色に染まり始めた
こんな空の対比を堪能できるチャンスには替えがたい。
(ただし、国内線では迷わず通路側を選ぶが)
話は前後するが、出発直後に強制的に見せられる
安全対応のビデオが、実は意外に好きだったりする。
フライト・アテンダントという言葉がまだなかった時代、
通路に立った妙齢のスチュワーデスさんが実演してくれた
ライフ・ジャケットに息を吹き込むこのパフォーマンスを見るのが、
飛行機に乗る最大の楽しみだった。
というわけで、最新式旅客機A380の大型モニターに映るこの場面を
どうしても撮りたかった。
12インチはあるんじゃないかという大画面にアップで映し出される
このシーンは、オトさんを興奮させる。
一度しかないシャッター・チャンスを見事に捉えた素晴らしい写真だ、
と見境なく自画自賛してしまおう。
飛行機での最大の楽しみがスチュワーデスさんのパフォーマンスを
堪能することだとすれば、
旅の楽しみの第一は、食である、と断言する。
『食う、寝る、遊ぶ』という言葉の通り、
まず食が来て、次がベッド(あるいは部屋の居住性)、
そして旅本来の目的(今回はダイビング)は3番目である。
成田-シンガポールのフライトでは、ランチが供される。
今までのオトさんのブログなら、
オトさんが選んだインターナショナル(チキン)と、
アケちゃん(嫁)が選んだ和食(魚の照り焼きと蕎麦)の画像を
掲載するところだが、
このブログはコンセプトを少し変えているので、
今回は敢えてデザートのアイスクリームをフィーチャーする。
だって、フォションですよ、フォション。
うまかったー。
というだけなんですが。
エア・チケット代金のうち、250円はこのアイスクリームの費用なんだと
納得する。
キャバクラか!?
A380の機内は、横に広いし、縦にも長い。
ヘッドクリアランスも、他の機種と変わりない。
エコノミー席は各階ごとにギャレイとトイレで3ブロックに分かれているので、
座っていると広大な感じはしないし、トイレまで何kmも歩く必要はない。
視界が適度に遮られ、その点で居住性も考えられているようだ。
オトさんとアケちゃん(嫁)の席は、
ビジネスクラスのすぐ後ろのブロックだった。
ドリンク・サービスの際、ブロックを仕切るカーテンが開けっ放しだった。
ギャレイの向こうはビジネス・クラスだ。
見に行ってみようか、という好奇心と
大人気ない、という抑制との葛藤にしばし苛(さいな)まれたが、
通路側のシンガポール・チャイニーズを煩(わずら)わせて
席を立つ勇気がなく、撮影だけにしておいた。
本当は、最後部にある2階への優美な曲線を描いた階段も
見てみたかったのだが・・・
いいオヤジが、コンパクト・デジタルカメラを掲(かか)げて
機内をジージー(ズームの音)撮っているのも
イタいといえば相当イタい図だと思うが、
こちらにはブログネタの取材という大義名分がある。
それにしても、
エコノミーの照明がデパートの店内みたいなのに比べて、
ビジネスは、高級キャバクラみたいじゃないか。
大渋滞
出発前に機内でおしぼりが配られた。
紙ナプキンではなく、ちゃんとした布のおしぼりだ。
あれは、エイズが大流行した頃だったろうか?
初めて手渡しではなくトングで渡された時には違和感を感じたものだが、
いつの間にか慣れてしまっている自分がいる。
機は定刻どおり11:30にゲートを離れ、長い時間をかけて移動していく。
機内誌や真新しいリモコンの操作法の習得に夢中になっていたせいで、
止まっているのに気づかなかった。
遮音性が高いのか、エンジン音がとても静かなせいもあった。
機が、エプロンから滑走路へのアプローチへと直角に曲がったときに
理由がわかった。
A380の後ろに、離陸待ちが6機も並んでいる。
まるで旧ソ連のスーパーマーケットか、
ジャニーズ系タレントのコンサート前売会場じゃないか。
それはそれで楽しい景色なのだが、
東京の玄関としてふさわしい光景と捉えるべきなのだろうか?
シンガポール・チャンギ空港にはどんぴしゃ定刻に着陸したということは、
この渋滞は織り込み済みということなのでしょうか?
2008/10/23
エアバスA380
2008/9/20 10:59 at 成田空港第1ターミナル46番ゲート
エアバス社A380。
世界で初めての総2階建て超大型旅客機。
シンガポール航空が2007年10月に初定期就航、
2008年5月から成田に乗り入れた機体だ。
16ヶ月ぶりのモルディブ行きで、
楽しみの一つがこの機体に乗ることだった。
搭乗72時間前ぴったりにe-チェックインを試みたにも関わらず、
2階席の窓際はすでに空席はなく、やむなく1階席を予約した。
当たり前のことだが、1階に2口、2階に1口あるドアに合わせて
ボーディング・ブリッジは途中で分かれている。
(その写真を撮り忘れたのが悔やまれる)
前から見た姿は、コックピットの窓から上がもっこりしていて、
デコッパチになっているので、
宮﨑県知事の名前をあだ名として進呈することにした。
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